インタビュー

Interview

「日常」を陰ながら支える仕事

「日常」を陰ながら支える仕事

増山 崇寛

Takahiro Masuyama

検査員 / 2004年新卒入社

「保障措置」という言葉に触れたきっかけ

六ヶ所もそうかもしれませんが、原子力施設が近くにある地域出身だと、親や知人がそういった原子力関連の仕事をしていたというのが、「原子力」の存在を知るきっかけになるかもしれません。
私は茨城県大洗町出身で、大洗町も昔から原子力と密接な関係にある地域で、小中学生時代には、写生会や職場体験で何度か訪れたものです。父は東海村の日本原子力研究開発機構(旧サイクル機構)に勤めておりました。そこには、核物質管理センターが検査に来ていたそうです。
「保障措置」は核物質が平和利用のみに使用されていることを証明すること、原子力に関わる仕事は将来的にも必要とされる専門性の高い業界で、長い目で勤めることができることなどを教わりました。
それから工業高校の電気科に進学し、就職活動の際に核物質管理センターから求人が来ているのを知り、応募しました。核物質や放射線に対してマイナスなイメージを持っている方もいますが、なぜ危険なのか、安全と言えるのかの知識をもってすれば漠然と怖がる必要はないということを私は父のおかげで理解していたので、不安はありませんでした。

青森地区以外を管轄する東海保障措置センター

ウランやプルトニウムなど核物質を扱っている施設は全国にあります。原子力発電所やウラン加工事業者、小さいところでは大学の研究室などが持っています。東海の保障措置検査員は、六ヶ所が管轄する青森地区以外のそれらの施設とやりとりをして、核物質の管理がきちんとなされているか、現地へ行って検査します。例えば、放射線を図る測定器などを使い、無作為に計測し、施設からの申告をもらい、実際にその差が無いかを調べる、とかですね。
ゆくゆくはそれが国際原子力機関(IAEA)に報告され、国際的にも日本はちゃんと管理がされていますよという証明に繋がります。重要な仕事です。
東海の場合、南は九州、北は北海道までと、多い時で月に5〜8日くらいは出張があります。行ったことが無い知らない土地へ行けるのは、小旅行のような気がして私は好きです。

業務で出会う様々な国の方とのコミュニケーション

検査のときはIAEAの査察官と行動を共にします。IAEAはオーストリアのウィーンに本部があって、国際協定に基づき日本へ査察をしに来ます。私たち日本の検査員とIAEAの査察官で、共同で査察を行っているようなイメージです。
IAEAには、中国、韓国、インドネシア、中東、アフリカ、イタリア、フランスなど、たくさんの国籍の方がいます。仕事上は共通語として英語を使っており、専門性がある単語は有りつつも、お互い分かりやすいような単語などで話しています。
学生時代、私は英語に力を入れていて、それも役には立っているのですが、実際にいろんな国の方と話せる今のほうが、より一層実践的な英語が身についたと思います。
ここで働き始めてから仕事の中で英語で文書のやりとりをしたり、現場で試行錯誤してちょっとずつ話せるようになっていったのを実感しているので、英語に自信がない方でも焦らなくて大丈夫だと思います。

視野が広がった東京勤務

2017年から2021年までの4年間、東京本部で勤務しました。最初は保障措置検査や化学分析の全体的なマネジメント業務を行う検査管理室という部署を2年。次に原子力規制庁の保障措置室という、核物質管理センターが行っている保障措置の執行機関への研修で約1年。最後は、核物質管理センターの運営・予算を管理する企画室を1年。
検査員以外のこういった経験から、これまでと違った視点で自分の仕事を見られるようになりました。保障措置に関わる国内外のたくさんの人々との繋がり、私たちの活動そのものの予算とその調整など、「原子力の平和利用」のためすべてのことが組み合わさって多面的に機能していると学ぶことができました。

東海村は子育てしやすいコンパクトシティ

去年東海に戻ってきてからは、東海村に住んでいます。休日はほとんど子どもと過ごしていますね。なるべく定時で帰って、家族の時間を確保しています。
東海村は子育てに適していて、少ない移動で必要なものが揃うので主婦の方々の間では「コンパクトシティ」と言われています。転勤で家族が不安を感じていたようなのですが、今では住みやすいと言っています。

人々の生活を陰ながら支えているという自負

皆が不自由なく電気が使える生活を、陰ながら支えるのが私たちの仕事です。日本国内における核物質の管理に大きな不備があると、日本の原子力政策自体に制限がかかり、発電所も使えなくなります。ですので、日本が原子力発電の電気を今日も安心して使えているということが、私たちが仕事として証明できているということになっていると思っています。
保障措置検査員、核物質管理センターの仕事に、興味を持って頂ける方が増えてくれたらうれしいです。