日本による対IAEA保障措置技術支援（JASPAS）について

IAEA保障措置への加盟国支援計画のあゆみ

IAEA保障措置の効果的、効率的な実施のため、加盟国からの技術的支援の必要性については、核兵器不拡散条約(NPT, 1970年発効)による保障措置実施のためのモデル保障措置協定（INFCIRC/153）を議論したIAEA理事会の保障措置委員会(1970年から1971年に開催)において既に認識されていました。当時IAEAでは査察機器等の開発を専門的に取り組む部門がなかったため、原子力先進国からの技術支援を必要としていました。
そこで、1977年に米国、1978年にカナダ及びドイツ、1980年に英国及びオーストラリア、そして1981年に日本及び欧州委員会（EC）が加盟国支援計画(Member States Support Programme, MSSP)を開始しました。各国の支援計画はそれぞれの支援計画名を持ち、その全体をMSSPと称しています。2024年4月現在、23ヶ国及び1国際機関がMSSPに参加しています（表1）。

表１　MSSP参加国（参加順）

年	参加国	年	参加国
1977年	米国	1992年	インドネシア
1978年	ドイツ、カナダ	1994年	アルゼンチン、オランダ
1980年	オーストラリア、英国	1997年	韓国、（インドネシア中止）
1981年	日本、欧州委員会(EC)	2003年	チェコ、南アフリカ
1982年	フランス、ロシア、ベルギー	2005年	ブラジル
1985年	イタリア	2007年	スペイン、中国
1987年	スウェーデン	2021年	スイス
1988年	フィンランド	2023年	アラブ首長国連邦、ノルウェー
1991年	ハンガリー、（イタリア中止）

JASPASによる支援

日本は、1981年11月にMSSPの一員として、JASPAS（Japan Support Programme for Agency Safeguards）という名称で、IAEAに対する支援計画を開始しました。支援計画は表2の６つのカテゴリーで実施されています。現在スタンバイ中のタスクを含め32件のタスクを実施しており、これまで158件のタスクへの支援を継続してきました（2024年4月現在）。

表２　JASPASタスクのカテゴリー及び件数

カテゴリー	タスク数
(1) 保障措置システム設計・保障措置アプローチ	4(22)
(2) 保障措置データの収集・処理・評価	5(18)
(3) 測定方法および測定技術	7(26)
(4) 封じ込め／監視	0(19)
(5) 訓練およびコストフリー専門家	14(71)
(6) アンブレラ・タスク*	2(2)
計	32(158)

(  )内の数字はこれまでに完了または終了したタスクの総件数
* 複数のサブタスクから構成される包括的なタスク

現在実施中のタスク一覧

当センターが果たす役割

JASPAS発足当時より、当センターは原子力規制庁・保障措置室の指導の下、JASPAS事務局として受託したタスクに係る年次報告書の取りまとめやIAEAとの間で開催される年次会合においてタスクの進捗状況を確認するための資料作成等の支援業務を実施しています。

年次会合等の開催実績(最近の5年間)

日本国とIAEAの間で開催される年次会合は、年度に1回の頻度で開催され、タスクの進捗状況確認等が行われます。また、MSSP参加国が一堂に会するMSSPコーディネータ会合は、2年に1回の頻度でIAEA本部にて開催され、IAEAが次の2年間に実施するプロジェクトにおいて必要とする支援等をまとめた文書（Development and Implementation Support Programme for Nuclear Verification）に関するプレゼンテーションが行われます。

(2019年度)
2020.1.29-1.31　MSSPコーディネータ会合　（IAEA本部）
2020.2.3　JASPAS年次会合　（IAEA本部）

(2020年度)
2021.4.15　JASPAS年次会合　（オンライン開催）

(2021年度)
2022.3.1-3.4　MSSPコーディネータ会合　（IAEA本部）
2022.3.21　JASPAS年次会合　（IAEA本部）

(2022年度)
2023.3.15　JASPAS年次会合　（IAEA本部）

(2023年度)
2024.2.20-22　MSSPコーディネータ会合　（IAEA本部）
2024.2.23　JASPAS年次会合　（IAEA本部）